新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜

高橋さんは、まるで旅行者気分の私に優しく微笑んでくれた。
そして、案内をしてくれた店員さんが、1つのガラスケースの前で立ち止まると、ケースを挟んで高橋さんの前に立った。
「Please wait a moment」
少し待っていると、ケースの中から小さな筒型の入れ物を、何種類か出してくれた。
あっ。
この小さな筒型の入れ物に、見覚えがある。
「これって、高橋さんの車のキーホルダーに付いているのと一緒ですよね?」
何時も、キーホルダーの車の鍵と一緒に付いていて、何だろうとずっと思っていた。
「そう」
高橋さんは柔らかい笑みを浮かべると、店員さんと何か話している。
「Could you show me?」
ゴールドとシルバー、それぞれの入れ物を指さして、中を見せて貰っている。
隣で、身を乗り出すように綺麗な筒型の入れ物を、高橋さんと一緒になって覗き込んでいた。
「綺麗……」
ライトに照らされて、キラキラと光るゴールドとシルバーの色が眩しいぐらいだ。
「Which do you like?」
「へっ?」
唐突に聞かれて、また変な返事になってしまった。
「ハハッ……。 お前。 相変わらず、緊張感ないな。 だから、どっちがいいかって聞いているんだ」
「私、ですか? うーん……私だったら……えーっと……どっちでもいいです」
どっちかって聞かれても、甲乙付けがたい。 どちらも本当に綺麗だもの。
それを聞いた高橋さんは、がっくり項垂れてしまった。
「あっ……。 でも、高橋さんが持っていらっしゃるのは、確かゴールドでしたよね? だったら、ゴールドの方がいいかもしれません」
「お前。 そういう所、よく見てるなぁ」
感心したように高橋さんは言うと、店員さんにまた何かを告げていた。
そして、ゴールドの方に決まったらしく、会計をして店員さんが商品を包装しに行っている間、高橋さんと椅子に座って待っていた
「何方かの、お土産ですか?」
なかなかこんなお店に、1人で入る機会もないだろうと、ショップ内をキョロキョロしながら聞いてみた。
「まあ、そんなところ」
暫くすると、店員さんがTiffany blueの袋を持って戻ってきた。
「Thank you very much……Have a nice day」
「You too」
二言、三言、会話を交わすと、店員さんが入り口まで見送ってくれようとしたので、慌てて高橋さんにお願いして、お目当てのガラスケースのコーナーに直行し、ピアスを1セットGetしてからショップを出た。
ああ、嬉しいな。 
安く、良いお買い物が出来ちゃった。
それにしても……。