高橋さん。
そんな、はっきり言うなんて。
「何ですって! 何故ですか? この子は、幹事じゃないですか。 それなのに、どうして抜け駆けするみたいに帰るんです?」
「きちんと、正幹事の許可はもらってあります。 具合が悪いので、連れて帰るだけです。 何か、問題でも?」
こういう時の高橋さんは、強い。 理詰めで来られても、絶対につけ込まれるような隙は見せない。
「私とは、ロビーで打ち合わせだけしかしてくれないのに……。どうして矢島さんのことは、そんなに大事に扱うんですか? こんな子の何……」
「大事な部下ですからね。 それに、こんな子の等と言われるのでしたら尚のこと、庇うのが上司としての勤めですから」
土屋さんの言葉を遮るように、高橋さんは言い切った。
待って。
それじゃあ、2人っきりでは会っていないと高橋さんが言ってたことは、本当だったんだ。
土屋さんは、私達が宴会場から戻って来た時、高橋さんの部屋の呼び鈴を鳴らしていた。
でも、違ったんだ。
あの後、高橋さんの部屋に土屋さんは入ったわけではなくて、2人はロビーに行ったんだ。 てっきり土屋さんが、高橋さんの部屋に入ったとばかり……。
高橋さんに、酷いことを言っちゃった。
「な、何ですって!」
凄い剣幕で、土屋さんが私を睨みつけている。
「勘違いしないで頂きたい。 確かに、土屋さんにご相談を受けて会社の会計の高橋ではなく、一会計士としてご相談に乗らさせて頂いているのは事実です。しかしながら、私本人の会社での行動に関してまで、制限される覚えはありません。 そこのところは、はき違えないようにして頂きたい。 では、失礼する」
久々に聞く、辛辣なお言葉だった。
高橋さんは、床に置いてあった私の荷物を持つと、直接触れはしないが私の背中を押す仕草をした。
「な、何よ! そんなことぐらい、分かってるわよ」
その声に、振り向いて土屋さんを見ると、土屋さんは憤懣やるせない態度でそのまま部屋の中に入って行く姿が見えた。
「い、いいんですか? 大丈夫なんですか? あんなに、土屋さんを怒らせてしまって……」
後のことを考えると心配になって、高橋さんの顔を見上げた。
「別に、構わない。 今は、お前が最優先だ」
高橋さん……。
高橋さんは、左手に持っていたホテルの部屋のカードでこちらを指しながら、私の方に頭を傾けた。
何だか、ここ何週間の蟠りが少しとけて、解けた糸をまた結び直すようにゆっくりと、静かに時が戻っていく感じがする。
この前、高橋さんが家に来た時は、こんなに心に余裕はなかったな。
そして、何日ぶりだろう?
本当に、久しぶりに高橋さんの車に乗った。
何も、変わっていない
最後に乗ったのは、何時だっただろう?
それだけ、乗っていなかった気がする。
緊張することも多いのに、やっぱり此処に座ると不思議と安心出来る。
耳に心地よく入ってくる音楽を聴きながら、いつの間にか眠ってしまっていた。
「着いたぞ。 起きられるか?」
高橋さんの声で、目が覚めた
「えっ? あっ……すみません。 私、寝ちゃって……もう着いちゃったんですね。」
まだぼんやりとしていて、周りの景色はよく見えなかったが、高橋さんの車に乗ったことは覚えていた。
少し目が覚めて来て、辺りを見渡した。
エッ……。
てっきり自分の家の前だとばかり思い込んでいたが、着いた場所は高橋さんのマンションのエントランスだった。
驚いて、運転席の高橋さんを見る。
「何?」
「あ、あの……此処って、高橋さんのマンションですよね? 私……家に帰るんだとばかり思っていたので、その……」
何だか、恥ずかしい。
きっと、寝顔も見られちゃっただろうし……。
しかも、酔いもまだ残っていて頭が痛くなってきた。
「だって、お前が俺のお臍が見たいとか言い出したんじゃなかったのか? だから、俺のマンションに連れてきてやったんだろう」
そんな、はっきり言うなんて。
「何ですって! 何故ですか? この子は、幹事じゃないですか。 それなのに、どうして抜け駆けするみたいに帰るんです?」
「きちんと、正幹事の許可はもらってあります。 具合が悪いので、連れて帰るだけです。 何か、問題でも?」
こういう時の高橋さんは、強い。 理詰めで来られても、絶対につけ込まれるような隙は見せない。
「私とは、ロビーで打ち合わせだけしかしてくれないのに……。どうして矢島さんのことは、そんなに大事に扱うんですか? こんな子の何……」
「大事な部下ですからね。 それに、こんな子の等と言われるのでしたら尚のこと、庇うのが上司としての勤めですから」
土屋さんの言葉を遮るように、高橋さんは言い切った。
待って。
それじゃあ、2人っきりでは会っていないと高橋さんが言ってたことは、本当だったんだ。
土屋さんは、私達が宴会場から戻って来た時、高橋さんの部屋の呼び鈴を鳴らしていた。
でも、違ったんだ。
あの後、高橋さんの部屋に土屋さんは入ったわけではなくて、2人はロビーに行ったんだ。 てっきり土屋さんが、高橋さんの部屋に入ったとばかり……。
高橋さんに、酷いことを言っちゃった。
「な、何ですって!」
凄い剣幕で、土屋さんが私を睨みつけている。
「勘違いしないで頂きたい。 確かに、土屋さんにご相談を受けて会社の会計の高橋ではなく、一会計士としてご相談に乗らさせて頂いているのは事実です。しかしながら、私本人の会社での行動に関してまで、制限される覚えはありません。 そこのところは、はき違えないようにして頂きたい。 では、失礼する」
久々に聞く、辛辣なお言葉だった。
高橋さんは、床に置いてあった私の荷物を持つと、直接触れはしないが私の背中を押す仕草をした。
「な、何よ! そんなことぐらい、分かってるわよ」
その声に、振り向いて土屋さんを見ると、土屋さんは憤懣やるせない態度でそのまま部屋の中に入って行く姿が見えた。
「い、いいんですか? 大丈夫なんですか? あんなに、土屋さんを怒らせてしまって……」
後のことを考えると心配になって、高橋さんの顔を見上げた。
「別に、構わない。 今は、お前が最優先だ」
高橋さん……。
高橋さんは、左手に持っていたホテルの部屋のカードでこちらを指しながら、私の方に頭を傾けた。
何だか、ここ何週間の蟠りが少しとけて、解けた糸をまた結び直すようにゆっくりと、静かに時が戻っていく感じがする。
この前、高橋さんが家に来た時は、こんなに心に余裕はなかったな。
そして、何日ぶりだろう?
本当に、久しぶりに高橋さんの車に乗った。
何も、変わっていない
最後に乗ったのは、何時だっただろう?
それだけ、乗っていなかった気がする。
緊張することも多いのに、やっぱり此処に座ると不思議と安心出来る。
耳に心地よく入ってくる音楽を聴きながら、いつの間にか眠ってしまっていた。
「着いたぞ。 起きられるか?」
高橋さんの声で、目が覚めた
「えっ? あっ……すみません。 私、寝ちゃって……もう着いちゃったんですね。」
まだぼんやりとしていて、周りの景色はよく見えなかったが、高橋さんの車に乗ったことは覚えていた。
少し目が覚めて来て、辺りを見渡した。
エッ……。
てっきり自分の家の前だとばかり思い込んでいたが、着いた場所は高橋さんのマンションのエントランスだった。
驚いて、運転席の高橋さんを見る。
「何?」
「あ、あの……此処って、高橋さんのマンションですよね? 私……家に帰るんだとばかり思っていたので、その……」
何だか、恥ずかしい。
きっと、寝顔も見られちゃっただろうし……。
しかも、酔いもまだ残っていて頭が痛くなってきた。
「だって、お前が俺のお臍が見たいとか言い出したんじゃなかったのか? だから、俺のマンションに連れてきてやったんだろう」

