七瀬先生、ここから先は違法です


◯屋上(夜)


 夏鈴は夜の校舎を歩いて、天体観測を行う屋上に辿り着く。
 屋上のドアを開けると、七瀬先生が天体望遠鏡の隣に座って夜空を眺めている。

 夜空一面に、星々が煌めいている。
 綺麗な星空よりも、七瀬先生を見つめる夏鈴。



七瀬「なーにやってんの?こっちおいで?」

夏鈴「……は、はい」


 七瀬先生に見惚れて入り口で固まっていた夏鈴に話しかける。


七瀬「……俺、知識ゼロだから、一から教えてな?」

夏鈴「は、はい!」


 夜空に輝く星たち。幻想的な雰囲気に、いつも以上に夏鈴は緊張する。

 
七瀬「肉眼でも綺麗だな……」


 七瀬先生が見つめる先には赤みを帯びた満月が見える。


夏鈴「……わあ!き、綺麗」


 七瀬先生のことで頭がいっぱいだった夏鈴は、遅れてストロベリームーンに気付いて感銘を受ける。


七瀬「くくっ、見るの遅せぇよ、どこ見てたの?」

 七瀬先生は肩を揺らして笑った。


夏鈴(七瀬先生に見惚れてた……なんて言えないなあ)


夏鈴(……って、また七瀬先生のこと考えちゃってる!七瀬先生のこと考えるのはやめよう!)


 夏鈴の頭の中に七瀬先生ばかり浮かんでくる。邪念を消すように頭を左右に振って、天体望遠鏡の動作確認をする。


夏鈴「え、えっと、天体望遠鏡で見ると……もっと、感動するはずです!こ、これを……」

 
 天体望遠鏡に興味津々な七瀬先生は、夏鈴の元へと近づく。

 夏鈴は天体望遠鏡を動かしてピントを合わせたり、作業に夢中で、七瀬先生と距離が近くなっていることに気づかない。


夏鈴「わあ!すっごく綺麗!凄い凄い!」


 ストロベリームーンにピントをしっかり合わせて、低倍率から徐々に倍率を上げて、はっきりとストロベリームーンを観測する。

 夏鈴は、憧れのストロベリームーンを観測出来て、テンションが上がる。


夏鈴「感動ものです!七瀬先生も!見てください!」

 天体望遠鏡から顔を離すと、七瀬先生との距離の近さに気づいてハッとする。


夏鈴(……びっくりした……七瀬先生と距離が近いっ!)


夏鈴「……せ、先生も!覗いてみてください」

七瀬「ふっ、」


 七瀬先生は夏鈴を見て微笑む。


夏鈴「え、なんで笑うんですか?」

七瀬「喜ぶ水原が可愛くて、見惚れてた」

 七瀬先生は恥ずかしがる様子もなく、甘い言葉を投げかける。その言葉に夏鈴の頬は真っ赤に染まる。