◯校内廊下(放課後・人の気配はない)
夏鈴「七瀬先生!……あ、ありがとうございました」
七瀬「俺も役に立つだろ?」
振り向いた七瀬先生は、柔らかい笑顔を浮かべる。
夏鈴「……七瀬先生のおかげで、廃部にならなくてすみました」
七瀬「水原が自分の気持ちを言葉にして伝えられたからだよ?よくがんばったな」
七瀬先生のおかげで教頭先生に自分の気持ちを伝えられた感謝の気持ちと、褒められた言葉に夏鈴は胸がいっぱいになる。
夏鈴「七瀬先生が、いてくれたから……勇気が出ました」
七瀬「それって……」
夏鈴「え、」
七瀬「俺のことが好きって意味?」
夏鈴「な、ち、違いますよ?感謝してるって意味です」
夏鈴(びっくりした……七瀬先生、突然変なこと言うから……)
七瀬先生は戸惑う夏鈴を見て「ははっ」と余裕そうに笑う。
七瀬「今日、天文部の活動日誌に観測の予定書いてあったよな?」
夏鈴「……そうなんです。山木先生が休職されたから中止になったんですけど、今日はストロベリームーンが見える日で。ストロベリームーンは年に一度しか見れなくて……。顧問がいないんじゃ仕方ないですけど」
今日はストロベリームーンを観測できる日。天文部で観測会を行う予定を組んでいた。しかし、顧問の山木先生が休職されたので、自然と中止になっていた。
七瀬「……今日、見るか」
夏鈴「え、でも、山木先生いないし……」
七瀬「ばーか。俺がいるだろ?」
夏鈴「えっと、天文部の活動って夜だから、きちんと学校に許可とらないと……」
七瀬「わかってるよ?これでも俺先生だぞ?顧問だしな」
夏鈴「そっか……本当にいいんですか?」
七瀬「ああ」
夏鈴「あ、ありがとうございますっ!」
夏鈴はストロベリームーンを観測出来る日を待ち望んでいた。諦めていたことが実現できることが嬉しくて口角も上がり笑みが零れる。
七瀬「部員は?」
夏鈴「えっと、天文部の活動に参加する子は二年の小坂くんと、木下さん……かな。あとは幽霊部員で……あ、私、伝えときますから」
七瀬「……いや、いい。俺が伝えとくから」
夏鈴「そ、そうですか?」
七瀬「ああ。……じゃあ、親御さんにちゃんと許可もらえよ?」
夏鈴「はいっ!」
楽しみで仕方ない夏鈴は声が弾む。



