◯教室・放課後(夕方)
校庭からは、サッカーボールが蹴られる音、野球のバッドが球を打つ音。部活に励む生徒の声が聞こえる。
誰もいない教室。夏鈴は窓側の席に座り、日誌を書いている。
陽夏(……日直なんて、ついてないなあ。七瀬先生に会わないうちに、日誌終わらせて帰ろう……)
教室のドアが開く音と同時に、七瀬先生が現れた。あたりまえのように夏鈴が座っている前の席に腰を下ろす。
陽夏(七瀬先生、前の席に座らないでよ、距離が近い)
七瀬「担任として、これからよろしくな?」
陽夏「……こうなることを知ってて、先生は意地悪ですね」
七瀬「ははっ、困ったことあったら言えよ?担任という権力で助けてやれないことはないぞ?理不尽なことも助けてやる」
陽夏「……生徒に権力を振りかざさないでください」
七瀬「担任はめんどくせぇけど、これで嫌でも俺と話さないとな?……水原は……担任の先生に相談するんだっけ?」
悪戯にニヤリと笑う。
陽夏「……はい、担任の先生として、宜しくお願いします」
七瀬「真面目だなー。俺が水原の立場だったら悪いことも考えるけどな?水原が『付き合う代わりにテストの答案教えて』とか言うタイプじゃなくてよかった」
陽夏「え、……そ、そんなこと」
陽夏(なんと、そんな作戦があったのか)
陽夏(ダメ、ダメ。先生に惑わされないようにしないと)
万年赤点ギリギリの夏鈴は、一瞬気の迷いが生じたのはいうまでもない。



