「はじめてだったのに……」

「ねぇ、何してんのー?」

小さな独り言を漏らせば、知らない声が耳に入ってはッと顔を上げた。


目の前には、はじめて見る栗色の髪の毛をした男の子が、にっこりと立っていた。


「え……?」

「はじめてって本当にー?」

「え、あ、あの。誰ですか?」

「俺?俺はB組の碓氷《うすい》 怜《れい》だよ」

「……」

「コハルちゃんは世間知らずだから知らないか」

"あはは"と笑い声をあげながら私の隣に腰を下ろすから、栗色の髪の毛がふわふわと揺れて。
少し垂れ目の犬みたいに愛着のわく表情に、一瞬 目を奪われたから自分でも驚いた。



「……す、すみません」

「あ、こっちこそごめんね」

「え?」

「シグレに面白い事吹き込んだの俺だからー」

「え?」