でも、ロルフが指を舐めて、脚の間に滑り込ませる。胴衣を羽織っただけの身体はすぐ暴かれてしまう。不安定なハンモックの上では身を捩るのが精一杯だ。


「これで本当に王族の手がついた者、になる。俺がいなくなったとしても、この国での君の生活は保障されるだろう」

 ――いなくなったとき?

「ロルフ様っ」


まるで大切にされているのではと錯覚してしまう手つきだ。一体この人がなにをしたいのか分からない。想像できるだけの情報をニーナはなにもしらないのだ。王族からの生活の保障も、今のニーナにはどうでもいい。

こんなの、仮初めの愛人以下。
 ロルフのことをニーナはなにも知らない。どうして切なげな表情をするのか。
 言葉の先に続くであろう思いだって、なにひとつ想像すら出来ないのだ。
 それなのに身体だけがまるで恋人のように繋がっている。

「……できるだけ早く終わらせる」

 
 ニーナが全身を震わせた後、強く抱きしめられ注がれた熱を受け止めた。
 熱い吐息が絡まって、視界の隅で美しい銀髪と太陽の光が揺れている。
 香水のこと以外でこんなにも切なくなり、苦しいと、知りたいと思ったのは初めてで、ニーナは一筋の涙をこぼして男の背に手をまわした。