人間の姿では考えられないほど身軽で、嗅覚も鋭い。微かな音にだって素早く反応できる三角の耳もある。子供の頃、自ら猫化して体力の限り森を走り回っていたことを思い出す。
――『初恋の彼』に出逢ったのも森の中だった。彼が『空を見せてやる』なんて言うから……そのときにお日様の香りと空の色を閉じ込めようとして……彼に……。
靄のかかった記憶が少しずつ蘇る。彼に、なにかを渡した。どうしてこれ以上思い出せないの。
――そう、なにかを……渡して……ロルフ様の香水!
ニーナははっとして、当初の目的を思い出す。香水を持っていたはずの手には肉球以外なにもない。ミカエルから逃げるときに全て置いてきてしまったのだ。
香水も、ドレスも、靴も。今のニーナにはなにもない。
――まずいわ。非常に……。
一旦植物園から出よう。そう前足をだした瞬間、誰かの足音が植物園の中に入ってきたのが聞こえた。そこから少し遅れて、ニーナが逃げ込んだときには解放されていたであろう扉が閉まる音が響く。
カツカツと響く足音は忙しなく園内を歩き回っている。
この植物園を管理している人かも知れない。だとしたら許可無く入ったうえに、ちゃっかり木登りまでしていた身としては非常にまずい。
――『初恋の彼』に出逢ったのも森の中だった。彼が『空を見せてやる』なんて言うから……そのときにお日様の香りと空の色を閉じ込めようとして……彼に……。
靄のかかった記憶が少しずつ蘇る。彼に、なにかを渡した。どうしてこれ以上思い出せないの。
――そう、なにかを……渡して……ロルフ様の香水!
ニーナははっとして、当初の目的を思い出す。香水を持っていたはずの手には肉球以外なにもない。ミカエルから逃げるときに全て置いてきてしまったのだ。
香水も、ドレスも、靴も。今のニーナにはなにもない。
――まずいわ。非常に……。
一旦植物園から出よう。そう前足をだした瞬間、誰かの足音が植物園の中に入ってきたのが聞こえた。そこから少し遅れて、ニーナが逃げ込んだときには解放されていたであろう扉が閉まる音が響く。
カツカツと響く足音は忙しなく園内を歩き回っている。
この植物園を管理している人かも知れない。だとしたら許可無く入ったうえに、ちゃっかり木登りまでしていた身としては非常にまずい。


