深い、海の底のような瞳が微かに細められる。国民ひとりに王子が駆け寄り、身を案ずる。ニーナにとって、ありえないことだった。
――なぜ、こんな風に優しくするのかしら。
昨晩、ニーナの身体をまさぐったのは他でもない、この第二王子だった。恐ろしく、不安で、噂通り極悪非道だと思ったのだ。でもなぜか流されてしまった。愛する人とする行為、子供を授かるためにする行為……のはずなのに。ニーナは昨日はじめて直接言葉を交わした王子に身体を許そうとしたのだ。
自分でもなぜなのかその理由は分からなかった。ただ、王子の要求を拒めばこの城にいることは許されなくなるかも知れないという、仕事のチャンスを失うことへの恐れだったと自分を納得させている。
「……んっ、ロルフ様……ッ」
顎を引き寄せられ、口付けをされている今も。なぜか抗うことができない。
――こんなふうにされて嫌なはずなのに……指をケガするよりもこっちのほうが危ないわ……。
キスは角度を変えて深まり、戸惑う小さな舌は絡め取られ器用に吸い上げられると頭がぼうっとしてなにも考えられなくなってしまう。
「ふっ……ぁ……はぁっ……」
ようやく離された唇にニーナは肩で息をした。顔に血が集まって熱い。
「……昨日の香水をあとで持ってきてくれ」
――なぜ、こんな風に優しくするのかしら。
昨晩、ニーナの身体をまさぐったのは他でもない、この第二王子だった。恐ろしく、不安で、噂通り極悪非道だと思ったのだ。でもなぜか流されてしまった。愛する人とする行為、子供を授かるためにする行為……のはずなのに。ニーナは昨日はじめて直接言葉を交わした王子に身体を許そうとしたのだ。
自分でもなぜなのかその理由は分からなかった。ただ、王子の要求を拒めばこの城にいることは許されなくなるかも知れないという、仕事のチャンスを失うことへの恐れだったと自分を納得させている。
「……んっ、ロルフ様……ッ」
顎を引き寄せられ、口付けをされている今も。なぜか抗うことができない。
――こんなふうにされて嫌なはずなのに……指をケガするよりもこっちのほうが危ないわ……。
キスは角度を変えて深まり、戸惑う小さな舌は絡め取られ器用に吸い上げられると頭がぼうっとしてなにも考えられなくなってしまう。
「ふっ……ぁ……はぁっ……」
ようやく離された唇にニーナは肩で息をした。顔に血が集まって熱い。
「……昨日の香水をあとで持ってきてくれ」


