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目が覚め、窓を開けた瞬間、ニーナは今までの出来事が夢でないことを改めて実感した。
そして、起き抜けに飲みかけの紅茶をみつけて好奇心から匂いを嗅いでいたところを、あろうことかロルフに見つかってしまった。そのうえ驚いた拍子にカップを割ってしまう始末。
「……ロルフ様、あの、私達、どこかで……」
部屋を出る前にロルフを呼び止め思わず聞いてしまった。
昨日の夜からずっともやもやと胸の奥が落ち着かない。
――ずっと、『初恋の彼』はこの国のどこかにいる猫族の誰かだと思っていた。
でも、それがもし、今目の前にいる竜族の男だとしたら。
そんな、まるでおとぎ話のようなことがあるはずない。分かっているのに、聞かずにいられなかったのはそれを期待している自分がいたからなのかもしれない。
だが、男はそれに応えなかった。
「……赤い満月の日が近づいている。昨日君が持っていた香水をあとで持ってきて欲しい」
「は、はい」
こくこくと頷くニーナにロルフはふっと笑ってニーナの頭を軽く撫でる。
「やはり香水はあとで取りに来る。調香室へも案内したいからそのときに」
「調香室……!」


