【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。

 ――魔力を持たないって……この国では誰でも多かれ少なかれ持っているものではないの? それに、いくら王族でもそんなことをして許されるの?

『許されないわよ! それに当たり前を持っていないからこそ恐ろしいんじゃない。でも、みんなが溜飲を下げてるのは訳があるの。それが一月後の赤い満月の日よ。第一王子のお誕生日と重なるんですって。その日に第二王子の悪行が裁かれるって話しなの。だからみんな堪えているのよ――』

 話によると、非道な悪行だけでなく、竜族の聖なる力によって護られているはずの土地の加護が薄れているのも第二王子が持たざる者であることが原因らしい。
 公にされていないそれらの情報はニーナにとってただの根も葉もない噂でしかなかったが、今日実際にあのような態度を取られると納得してしまう部分がある。

「極悪王子……持たざる者……酷いい草ね、でも」

極悪と呼ばれるあの人を、思い出したくないニーナの気持ちと、調香師としての本能がせめぎ合う。

 ――あの方、香りがしなかった。