自宅に辿り着き、人目につかないよう地下室へ逃げ込んだ猫は持ち前の体力で少し休むとすぐ人の姿に戻ることが出来た。そんなニーナが真っ先に向かったのは夕飯はまだかと怒鳴る家族ではなく、心配ばかりかけてしまった友人のところだった。
尋ねてすぐ、飛び出してきた友人はニーナに抱きつき安堵から暫く泣いた。
「ニーナ……無事なのは本当によかったけど……本当に受けるの? 私は怖いからやだよお」
「うん。私ひとりでも受けるつもり」
ようやく泣き止んだリリィが一応、とニーナに差し出したのは『王族専属調香師選抜試験』の申込用紙だった。
参加しないことを前提に話していたリリィは即答で参加する意志を示したニーナに不安が隠せない。
けれどもう、ニーナはこの用紙を見た瞬間に決めたのだ。
このチャンスを無駄には出来ない。あの第二王子にまた会うことになればからかわれることになるのかもしれないが構わなかった。寧ろ、あの男にからかわれたままではいられないとすら思う。
「やってやるわよ……」
ニーナはリリィから受け取ったペンで申込用紙にサインをした。
すると用紙は輝き、星屑のようにキラキラと光の粉になってしまった。


