ニーナがおろされたのは、想像通り王城だった。
もちろん足を踏み入れたこともなければ、間近で見上げたことすらない。
そんな場所にやはり荷物用に抱えておろされ、登城するやいなや数人に囲まれて収穫したての野菜のように身体を洗われた。
香水とはまた違った清潔感のある香りの泡に包まれ、栗色の長い髪には艶が宿る。
そして新緑色の瞳によく似合う紺碧の美しいドレスまで用意されていた。
レースは襟元のリボンだけと最小限なシンプルなつくりは一見大人しそうに見えるニーナによく似合っていた。
王宮勤めの使用人によって美しく磨き上げられたニーナは逃げ道を塞がれ、第二王子の寝室に立っている。
――私になにをしろというのだろう。酷いことをされる覚悟だったけれど、こんなふうに……意味が分からない。
「適当に用意させたものだったが……悪くない」
大きな出窓を背にして、肘を突いて椅子に座り、しばらくニーナを鑑賞していた第二王子が顎で近寄るよう指示をした。
「もっとこっちへこい」
「……っ」
逃げられない。そう分かっているニーナは命令に従うしかない。獲物に追い詰められた猫は捕食者の元へじりじりと向かう。


