【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。

 ニーナは肩をびくりと震わせた。ミカエルへの賞賛ばかりかと思えば第二王子の名が聞こえてきたらだ。そのうえその内容は穏やかなものでない。

 ――確かに最低な人……だけど。

 恐らく、今ニーナが感じている怒りや恐怖とはまた違った嫌悪だ。口々に囁かれるそれをニーナは怖いと感じた。

 ――本人に聞こえていないと思っているの? ……なんだか嫌だわ。

 ちらり、とニーナは第二王子の顔を伺った。けれど、その表情は変わらず感情が掴めない。これだけはっきりとニーナに聞こえているのだ。猫族は竜族よりも耳がいいのかもしれないが、それを抜きにしても少しは聞こえているだろう。だが、それに反応する素振りすら見せなかった。

 ニーナが気になったのはロルフだけではない。馬車の外で控える護衛の者でさえそれを咎めることはなかった。自分たちの主が目の前で悪く言われているというのに、もしその言葉通りならここにいる人は全員処刑対象だろう。なんとも言えない違和感にニーナはすっかり黙ってしまった。

「……いい子だ」

 抵抗を止めた姿を服従と捉えたらしい第二王子は馬車を出すよう指示をすると、調香師をのせて進み始めた。