空は、ニーナが今まで見上げたものとは全く別の世界だった。
手を伸ばして触れた雲はふわふわで、しゅわしゅわな不思議な手触り。嗅ぐと雨の匂いがした。空から見下ろす王国はちいさくて、まるで模型のように思えてくる。
赤い月も近くで眺めると地上で見上げたときの禍々しさはどこへやら。まるで太陽のような情熱さと神々しさを感じる。
そして不思議なことに、ロルフは胸が苦しくないと言った。きっと、ニーナのおかげだと。
髪を梳かしてくれる夜風が心地いい。
ニーナはぽふっと真っ白な雲の上に寝転がる。
「……ロルフ様、私、ようやく全部思い出しました」
ニーナの手を握っていたロルフがつられて隣に寄り添った。
優しい視線を向けて、ニーナの言葉を待っていてくれる。
「最初にあの森に迷い込んだとき、私は猫の姿で高い木に登ってしまって……」
あの森には見たこともない美しい蝶や鳥が住んでいた。
幼いニーナは好奇心のままにそれらを追いかけ、気付けば猫の姿で随分と高い木の上にいた。それも今にも折れてしまいそうな細い枝で、不安になって下を見下ろしたらもう動けなくて。そこで声をかけてくれたのが銀髪の少年・幼い日のロルフだった。


