【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。

 そうなんだろう、と優しく問われる。すぐに首を振れない自分がいた。
 愛を信じていなかったのは私のほうだった。ロルフから逃げたのはそれが伝わってしまうのが怖かったから。なんて酷いんだろう、私は。

「違うんです……っ、ロルフ様のせいじゃ……」

 ロルフのせいではない。もし、本当に彼が《真実の愛》を知ることで呪いがとけるのであれば、その原因は自分にある。

 理由はとっくに分かっていた。だから、縋るようにこの森にきてしまったのだ。
 ニーナは、ロルフとの出逢いの記憶を完全に取り戻せていなかった。
 どれだけ愛を囁き合っても、体を重ねても、ロルフが大切に慈しんでくれている過去の自分の言動も、ロルフがくれた言葉も思い出せない。
 そしてそれは、自分に原因があることもわかっていた。

「分かっていたんです! 十三年前、ロルフ様が一方的に私の過去の記憶を消したんじゃないってこと……っ、あれは私がお願いしたんですよね? あの森に入った女の子が殺されたのを見て怯えて……」

 頭がズキッと痛む。ここまでは、ここ数日夢にみて思い出したものだ。

「ニーナ、無理に思い出す必要はない。もういいんだ」

 ロルフがニーナを記憶の波から引き摺り出そうとする。森がざわめいて、ニーナの耳を塞ぐ。