【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。



 赤い月が昇っている。禍々しさすら感じさせるのに、降り注ぐ月光は明るくて森の中はまるで昼間のようだ。
 やはりこの森は不思議だ。入り口は同じだったはずなのに竜を乗せた馬は正面からやってきた。今、この森は残念ながら猫の味方ではないらしい。

「んにゃっ!」

 慌てて近くの草むらに逃げ込んで真っ直ぐ走り抜けたのに、出てきたのは入った場所と同じ場所だったからだ。これが竜の味方をする森の答え。
 馬から下りたロルフは逃げ場をなくした猫に駆け寄り、すかさず抱き上げる。

「君はすぐに猫化して服を脱ぎ捨ててしまうな。この愛らしい姿で帰ってくるつもりだったのか?」
「……にゃっ」

 帰るつもりなんてなかった。行き場所なんてないけれど、もういっそのことこの姿のままどこか遠くへいけないだろうかとすら考える。呆れるほどの現実逃避だ。

 耳を伏せて俯いていると、そのすきに首になにかが巻かれる。
驚いて首元に触れると猫の肉球でもわかるほど上質なレースがあしらわれたリボンだった。
 それに、特別な魔力も感じる。普段着ている服とは全くレベルの異なる質であることは一目瞭然だ。
 不安げに顔を上げるとロルフが眉をさげる。