【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。

 陰というと暗いイメージを持つかも知れないが実際の効果は『落ち着き』や『集中力』の増進だ。そして陽は言葉通り『体力回復』や『気分高揚』がある。
 効果は香水に込められた魔力量と相性にもよって異なるが、薬ではないためそこまで気にする必要はない。そして、ニーナの属性は少年が希望する陽だった。

 ニーナは優しく頷くと、ベリーの香水を胸に抱き深く息を吸った。全神経を集中させ、手の中の瓶へ祈りを捧げる。
「――優しさの盾となり、尊き者をお護りください」
 ニーナが囁いた瞬間、手の中の香水が光り、摘みたてのベリーの香りに包まれた。
「わあ……! すごい……!」
店内が薄暗いこともあり、香水瓶の中はまるで暗闇に太陽の光が差し込んだ瞬間を切り取ったようで、少年は目を奪われている様子だ。

(どうか、この小さなお客様のお母様が元気になる手助けになりますように)
ニーナは強く願った。顔も名前も知らないお客様だが、元気のない母を心配する子供の気持ちは痛いほど理解できる。どれだけ不安で、どれだけ歯がゆいのか。
 ただ少し疲れているだけでありますように。そしてその疲れを少しでも癒やせますように。