ニーナは無意識に涙を零していた。新緑色の瞳から、ぽろぽろと安堵と感動が伝う。大きな竜は、猫の頬に寄り添うと丁寧にその涙を舌で拭った。ざりっとした感触がくすぐったい。ふふっと身を捩ると、竜は安心したように美しい目を細めた。竜の姿になっても、彼は彼のままだ。

 青い瞳と見つめ合ったとき、遠くからふたりを呼ぶ声が響いた。そしてタイミングを見計らうように白銀の竜はまた光に包まれていく。

『ロル様ー! 大丈夫ですかー! さっきこの辺りからすごい風が……! って、あっ、お邪魔しましたっ』

 ロルフが竜に姿を変えた瞬間に巻き起こった強風だとは知る由もない村人が散歩にでたふたりを心配し探しにきてくれたらしい。たどり着いた村人の前でふたりは静かに抱き合っていた。

「俺たちは問題ない。そろそろお暇するとしよう」

 ロルフはニーナの手を握って歩く。胸に秘めるには大きすぎる感動をニーナは必死に噛み締めて、竜の背中を見つめ足を進めた。