【異世界恋愛】【完結】猫族の底辺調香師ですが 極悪竜王子に拾われました。

 ニーナは嘘をついた。確かに少年が香水を買ってくれたあの日、その様子を訝るような人物がいた記憶は無い。それにその直後に登場した王族二名のおかげで注目はそこに集まっていた。けれど、二度目に少年に出会ったときは別だ。だって少年と一緒にロルフの上に落ちたのだから。
 ニーナは隣に座るロルフをちらりと伺うが、その表情はやっぱりフードに隠されていてよく見えない。
 叱っていた男性ははあっと溜め息をつくと渋々納得したようにテーブルの上に項垂れた。

『まあ、あの第二王子に見つからなかったならいいか』

 どくん、とニーナの心臓が不穏に高鳴る。
 男性は悔しげにテーブルに拳を叩きつけた。

『いくら報告をあげたってあの王子がもみ消してるから状況は全然改善しねえ! ミカエル様だけじゃこの国全土を護る聖力なんて……くそっ……あんな王子さえいなければ……赤い満月の夜がきて早く消えちまえばいいんだ……!』

 男性の悲痛な叫びを遮るようにニーナは机を叩いて立ち上がった。そんなのは噂話だ。早朝から食料や香水を届けるような彼がそんな悪人なはずがない。これ以上ロルフに酷い言葉を聞かせたくなかった。

 ロルフ様があなた達になにをしたのか。悪いことをしているのは本当にロルフ様なのか。