正体を隠したヴァンパイアは、甘い契約を交わしたい

状況証拠から見て間違いなく吸血

つまりりっちゃんの言っていたように会長はヴァンパイア

「何か用かな?」

何事もなかったかのように接してくる彼になんとも言えない身の危険を感じる

「先生に頼まれた資料を置きに来ました」

「ありがとう、ここ置いてくれる?」

早く置いて立ち去ることが最優先事項

先輩が示した場所に資料を置く

「あの、私はこれで」

踵を返して帰ろうとした時、腕を掴まれた

七緒(ななお)副会長、今日はもう先に帰ってて?」

「では氷狩(ひかり)会長、お先に失礼します」

「きみは退室する前にこれ書いて、ね?」

副会長が退室したあと、私に差し出されたのは入室理由書

そこで、と言われたのでまだ退室はかなわない

早く書いて出よう
そう思ってサラサラ記入していたときだった

──バチン

静電気が走ったときよりも激しい音

何事かと顔を上げると目があった会長

その瞳は赤くひかっていて、

「花門さん?」

こっ、怖い

入室理由書に書いた名前を見て私を呼んだ会長

声は優しいのに、赤い瞳は全く笑っていない

微笑でいる口もとからは長い犬歯…もとい牙があって恐怖が身体を支配する

そんな会長会長が手を伸ばしてきたので、咄嗟に目をつむる