正体を隠したヴァンパイアは、甘い契約を交わしたい

「よく私の傘って…」

「傘の柄に名前が書いてあったから」

そうだ、借りパクをされたことがあるから名前を書くようになったし予備の傘も持ってくるようになったんだった

「傘、本当にありがとう。それと、いくら機嫌が悪かったとはいえきつく当たってごめん」

「確かに昨日はびっくりしたけど、何事もなく帰れたみたいで良かった」

困ったときはお互い様って言うからねと笑うと驚いた顔で私を見つめてくる彼

人と目を合わせるの慣れてないから少し照れちゃいそう

「ありがとう、花門さんが困ってたら俺が助けるから」

「えっと、、、そのときはお願いしようかな」

「なら、まずは保健室行こう」

え?

話の脈絡が全く掴めない

私の手首を掴んでズンズン歩く彼は本当に保健室まで来てしまった

「はい、そこのベッドに座ってて」

何がなんだかよくわからないまま指示されたベッドに腰掛ける

薬棚から手際よく準備した向坂くんが「手、出して」

と言ったのでなにも考えずに左手を出した

「花門さん、右手を…」

「ごめんね…」

右手を出すと人差し指を消毒して、絆創膏も貼ってくれた

そこは今朝、電車で単語集をめくった時に切れた場所