正体を隠したヴァンパイアは、甘い契約を交わしたい

俺は──

俺は、ヴァンパイアといっても母親が人間のハーフヴァンパイアなんだ

母親が俺を生む頃には父親はいなかったみたいで、ずっと片親で育ててくれていた

そんな関係が崩れたのは俺が小学校へ入学した頃

喉が渇くことが多くなって相談したことが原因だった

「母さん、喉が渇いて我慢できない」

「悠良っ!なんてこと!…うぅ。」

「母さん?」

「お願いだからその目でこっちを見ないで」

俺を見た母親は泣き始めて、怖がるようになった

俺のこの赤くなる目

あの時に母親は自分の子がヴァンパイアと知ったようだった

そしてどんどん壊れていったんだ

悠良は人間だって母親自身にも俺にも言い聞かすようにいつもいつも口にしていた

優しい母親に戻ってほしくてでも怖がらせたくなくて喉が渇いたなんて言わなくなったし、目もなるべく合わせないようにした

だけど8歳のある雨降りの日に俺は捨てられた

土砂降りの中、傘もささずひとりで歩いてた

そんな時、俺に声をかけてくれた小さな少女がいたんだ

「びしょびしょだよ?やよん家に来て!」

「…」

無反応の俺を引っ張って家に帰った少女