次の日、登校するとすぐ向坂くんに呼び出された


一言も話したことのない同じクラスの男子、向坂 悠良(こうさか ゆら)くん

誰かと親しく話している姿を見かけたことがないから、きっと一匹狼タイプなんだと思う

私の友達のりっちゃんこと麻生 莉彩(あそう りさ)もまだ登校してないようだったので、2つ返事で了承した

「呼び出してごめん」

「ううん、大丈夫。何か用事あったの?」

ついてくればわかるから
と言われ着いた先、そこは昇降口

「昨日の帰りのこと覚えてる?」

そう切り出した彼

少し考えて思い出したのは傘を渡した…というか、押し付けたことくらい

「あっ、もしかしてここでうずくまってたのって…?」

「そう、俺。」

覚えてくれていたみたいで良かったと微笑んだ向坂くん

「っ…、昨日濡れなかった?」

初めて見る彼の微笑みに驚いたけど、悟られないように聞いてみた

「お陰さまで」

風邪も引かなくてよかったと安堵する

風を引いちゃったら学校を休むことになるし、そうすると授業についていけなくなる

…っていうのは私だけなのかもしれないけど

「この場所に置いたからってことを伝えたくて」

傘立てにおいてある私の傘を指さしてくれた