正体を隠したヴァンパイアは、甘い契約を交わしたい

「おはよう」

「やよい!大丈夫だった?」

「うん、もう治ったよ。心配してくれてありがとう」

そうだ、向坂くんにお礼言わなきゃ

教室をぐるっと見渡しても彼の姿がない

まだ来てないだけかと思ったけど、チャイムが鳴っても彼が来ることはなく、出席確認のとき、『向坂は風邪で休みっと』と言っていた先生から彼がいない理由を知った

スマホを開いて連絡をすればと手に取ったけど、

「電話もかけれないし、メッセージも送れない...」

そう私たちは連絡手段の交換をしていなかった

もどかしくて仕方がない

「りっちゃん、どうしよう」

「そんなの簡単よ、お見舞い行けばいいのよ」

放課後にりっちゃんに相談してみると返ってきたのはこの一言

「でも私、向坂くんのお家知らなくて」

「それなら大丈夫、私に任せて」

心強い私の味方なりっちゃん

職員室にいる担任の先生に計らってくれた

「りっちゃん、ありがとうっ!」

「いいよいいよ、先生も向坂のこと気にしてたみたいで行ってやってくれって頼まれたくらいだから。ってことで、はい」

りっちゃんから渡された向坂くんの住所が書いてある紙と配布物