彼は少し意地悪そうな、策略めいた顔つきをする。

「エリーヌ、後を向いて」
「は、はい」

 言われるがままに後ろを向くと、自分の首元に再びひんやりとした細い何かがかけられる感触があった。
 ふとそれを手に取ってみると、それはエリーヌがアンリに送ったブルーのルジュアル細工が光を受けて光っている。

「これは……」
「君のものが欲しかった。だから、交換。それは俺の大事なものだからもしよかったら肌身離さずもつけててほしい。それで……」

 エリーヌに見せるように細い指先でピンクのルジュアル細工のネックレスを持つと、そのまま自分の首にかける。

「君のものを俺にちょうだい?」
「──っ!!」

 今までのアンリの印象とは違い、なんとも色っぽく艶めかしい瞳と仕草でエリーヌを魅了する。
 それから……といった感じで言葉を続けると、もう一つ渡されていた手紙を見せて微笑んだ。

「これは大事に後で読ませてもらうよ。ありがとう」
「は、はい!」

 優しくて恥ずかしがり屋で、どこか危なっかしい印象を受けていたエリーヌだったが、夫の新たな一面を見て心がざわめいて鼓動の音を抑えるのに必死だった──