研究に時間を多く費やすようになり、公務や仕事で忙しくしている時期を乗り越え、少々落ち着いた二人──
 それでも毎日朝早くから夜遅くまで研究をしているが、なるべく食事はきちっとダイニングで取ろうと決めて食べている。
 最初は眠たい目をこすりながら時間をかけて起きていたエリーヌも、少しずつ朝に強くなってきていた。

 淡い色合いの涼し気な青のドレスを着て、エリーヌはダイニングへと向かった。

「おはようございます!」
「おはよ……──っ!!」

 すでに席についていたアンリは目を丸くしながら、硬直している。
 その横隣の席に座って、置いてあった水を一口飲んだ時にふと熱い視線を感じて夫のほうを見た。

「どうかしましたか? アンリ様」
「い、いや……そのドレス……」
「ああ、涼やかな色合いでいいですよね! 紫陽花のような雰囲気でグラデーションが綺麗です!」
「あ、ああ。そうだね……素敵だと思う」
「──?」

 そのドレスはおおよそ彼女が幼い頃、そして自分も少年だった頃に会った記憶の中のドレスとそっくりだった。