「何度言ったらわかるの?あなた、才能ないわね」



これが夢なら今すぐにでも起きたい。


灰色の背景にチラつく赤い口紅。


投げられた書類がゆっくりと落ちる。



ついさっき仕上げた企画書が今まさに床に落ちようとしてるのだ。



「あの…どこが……」


「あなた、もうこの仕事して随分よね。そんなこと言われないとわからないほどの新人さんなら降りていいわよ。

そこのあなた、ここの企画はいい調子ね。そのまま進めてちょうだい」


そう言ってもう話題は次に移った。


立ち尽くすわたしの周りは忙しなく時間が過ぎる。わかっているのに、そこから目を瞑りたくて前に進めない。



ガヤガヤとうるさい。耳鳴りがしてもう帰りたい。


そうだ、昨日は寝れてないんだ。


ご飯はいつ食べたっけ。


あー、昨日の昼におにぎりを食べたきりだ。





「…たさん、くらたさん、倉田唯(くらたゆい)さん」