湯山くんと初めて出会ったのは、中学二年生のときだった。



 9月のはじめ。二学期初めの転校初日。

 クラスメイト全員の前で、自己紹介をした。

 声が震えて、緊張しまくっていて。そのときのことは、今でも覚えている。



 自己紹介を終えた後、先生から言われた窓側の1番後ろの席に座った。

 こ、こわい……視線が。



「そしたら、じゃー湯山くん。席近いから、水町(みずまち)さんのこといろいろサポートしてあげてね」



「......は?」



 前の席から聞こえてきた低音が教室に響き、怖くて、身体がびくっと震えた。

 ―――これが、私が人生で一番最初に聞いた湯山くんのセリフだとは気づかずに。



「だって、席が近いやつなんて他にもいるだろ。なんで俺が」



 .....え、えっと、湯山くんと呼ばれた前の席の方、すみません......。

 そんなことを言われてしまうと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 私は後ろの席だからもちろん、彼の顔は見えないけど......。