「砂苗それ、日誌。残って書いてたの?」
「えっと、うん」
内容を書いてたというよりかは、湯山くんの名前を頑張って似せて書いていた、というほうが近い。
「でも終礼前に、もうすぐで書き終わりそうって言ってたよね? にしては30分って、時間かかりすぎじゃない?」
「あ……う……」
痛いところを突かれてしまった。
日記を届けるために職員室へ向かう間、私は放課後の出来事を話した。
「だから時間かかったの? もーまじめだなあ砂苗は。それで勇気出して声かけたのに、あいつ、"書いておいて"だと? てか湯山寝てたの? 砂苗困らせてる暇があったらとっとと名前書いて部活行けっつーの」
口をとがらせて地面を蹴る南ちゃん。
「砂苗、振り回されてばっかじゃん。……それでも、好きなの?」
南ちゃんは私が湯山くんを好きだってこと、知ってる。
私は両腕に日誌を抱えながら、ゆっくりうなずいた。
関わったら不憫なことばっかで、普通なら嫌いになるのに、好きになってる。
自分でも、おかしいってわかってるんだ。
君が私のことをただのクラスメイト程度にしか思ってなくて、私を好きになんかなるはずないのに。
そこまで、全部全部わかってるのに、好き。
―――――私は勝手ながら、クラスメイトの君に、振り回されている。



