中二。夏の終わり、秋の始め。

 空白だった俺の後ろの席が埋まった。



 ……一人の転校生によって。




 名前は、水町砂苗。

 大人しくて、話しかけてもあんまちゃんとした返事も返ってこねえし、席が前後だからってこいつの世話係をやるのは、正直すっげー面倒だった。



 だけど。




 ……あ、なんか困ってそうな顔。

 口では何にもしゃべらないくせに、考えてることが表情に全部出る。



 だから、分かりやすくておもしれーなって。




 気が付けば、俺は水町を目で追っていた。

 でも、苦しくて痛いはずなのにときどき甘い、この気持ちの正体が分からなかったんだ。



 そのせいで水町にぶっきらぼうな態度取ったり、傷つけるような発言をしてしまうこともあった。

 転校初日の、あのときのように。




 中3になるとクラスも別になり、ほとんど接点もなくなった。

 そのころだ。俺はやっと、水町のことが好きなんだってことに気が付いたのは。



 今までずっと、クラスメイトで近くにいたから。だから、分かんなかったけど。



 でも気が付いたからって告白なんてできるわけがねえし。

 だって……水町のことを傷付けてきたから。



 中学を卒業するときに連絡先くらい交換しときゃ良かったって思ったけど、俺のことなんてどうせ水町は嫌いだろうから。別にいいか。