当の本人は、自席で気持ちよさそうに寝ていたのだ。
「あの、湯山く~ん……」
もう一度名前を呼ぶけど、だめだ。全然起きる気配がしない。
というか湯山くん、部活はどうしたんですか。
外から陸上部の練習をしている様子がちらりと見える。陸上部所属の彼は、サボりといったところか。
そしてプチピンチ、とか言っておいてこの状況に胸を高鳴らせている自分が醜い。
ちょっとどきどきしている、なんて。
肩を叩いて起こしてもいいのだけど、男の子にそんな気軽なことができるほど私は大胆じゃない。そんなことしたら不快にさせること間違いなし。
……だって、湯山くんは私のこと好きじゃないから。
好きの反対は無関心。人によっては軽いけど、私にはちょっと難しすぎる。
無関心から好きにさせることもできるけど、それは逆に、無関心から嫌いにさせることもできるということ。
私の場合、変に深く関われば嫌いになられてしまうこと確定だ。



