「じゃあ、はい。単独ポッキーゲームをどうぞ」
すると、一番端に座っていた湯山くんが箱から1本取り出して南ちゃんに向けた。
「単独って、それもうゲームじゃないけど。てかあたしはいいよ。ほら、砂苗にあげな」
南ちゃんがちらっとこっちを見る。
「俺今、湖出に聞いてんだけど。いいじゃん、ありがたくもらっとけよ」
「……わかった、ありがと」
しぶしぶというように、南ちゃんは湯山くんからポッキーを受け取った。
ごめんなさい、南ちゃん。
気を使わせてしまったこと。
「水町にも。はい」
「あ、ありがとうございます……」
私は、湯山くんから差し出された袋の中からすっと一本取り出す。
……やっぱり、だめだ。
誰かがいないと私は、湯山くんと話すことができない。
南ちゃんにも、頼ってばかりで。
それに、湯山くんは……やっぱり、私のことを好きじゃない。
所詮、その他大勢。
友達の友達。
いや、友達ですらないよ。
ただの、席が近いってだけのクラスメイトなんだ。
それ以下になることはあっても、それ以上になることは、きっと———ない。
舌に触るチョコレートの味は、ちょっと苦かった。



