「あーもう、湯山だよ、湯山!」
「あ、え、ゆ、湯山、くん......?」
私の前の席の……。
「だからそーだって。ほら、1時間目移動教室だから。他のヤツらもう行っちまったし」
「え、うそ......」
周りを見渡すと、教室には私と彼以外誰もいなかった。
じゃあ私、朝のホームルームが終わったのも気づいてなかったってこと?
「そんなこと言ってる暇ねぇから。授業遅れたらまず......」
そのとき、キーンコーンとチャイムが鳴り始めた。
「やっべ鳴った、行くぞ!」
机の上に置かれた私の右手は、目の前にあった手によって強引に掴まれる。
そして思いっきり引っ張られた。
「わっ」
その勢いのまま席を立って、連れ去られるように走り出す。
校舎内でチャイムが鳴り響く中、私たちは廊下を駆け抜けた。
は……はやいっ。
私は遅いはずなのに、たぶん、湯山くんの足が速いからこんなにも景色の移り変わりが激しい。
階段を下りてすぐ近くにあったドアの前で、湯山くんの足は止まった。
同時に、握られていた手も離れる。



