あまりに急で、ありえない展開に僕は大混乱していた。



上手く辞退する言葉も見つからず、涼さんの運転する珍しい外車に載せられた。




それから走ること20分くらいだろうか。


大きなタワーマンションの駐車場に車は滑り込んだ。




い、いいんだろうか?

僕みたいな一般人で、しかもファンを公言するような奴にマンションを知られて――――



僕の心配をよそに、涼さんは颯爽と歩いて行ってしまう。



何故か駐車場にある豪華なエレベーターを素通りし、重厚な両開きの扉を開けると、ホテルのロビーみたいな広い空間に出た。



高そうなヨーロピアン調の応接ソファーも何組かある。



ここで待たされるのかな?


僕は涼さんを見上げた。


涼さんは振り返り

「こっち、ちょっといいかな?」



そう言うとそこにはまたもホテルみたいなカウンターがあった。


中にスーツ姿の男性がかしこまって立っている。




「お帰りなさいませ」


男性はうやうやしく言った。



この人は………何なんだろう?




「ミナトくん、これに名前書いて貰えるかな?」

涼さんに渡された紙に言われるまま名前を書いた。



「ありがとう、これでオレの所に一人で来ても入れるから」


「あ、ハイ」




え?




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