オレはモニターを見上げる人々の流れに逆らい、顔を見られないよう足早に歩いた。


横断歩道の手前で信号は点滅し、やがて赤に変わった。



仕方なく立ち止まると、ふと通りを挟んだ向かい側に、立ちすくむ人影が目に入った。




若い男のようだ。




そして男が立っている場所は、明らかに車道だ。


左折して来たタクシーがけたたましくクラクションを鳴らしている。




それでも男は歩道に戻るでもなく、無理やり渡るでもなく、ただ立ちすくんでいた。






そして呆然とモニターを見上げていた。





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