「……ママ、戻りましたけど、何かあったんですか?」 僕はカウンターへ駆け寄った。 のろり、と顔を上げたママの目は焦点が合っていない。 体は震えている。 「おい、彩子どうしたんだ?しっかりしろ」 客がママの肩を揺さぶった。 ママはその肩に置かれた手を取るとギュッと握り、しばらく震えが収まるのを待った。 「……ママ?」 ただならぬ様子に僕も不安から声が震えた。 「みつるが…………」 「死んだわ」 なにも見ていない瞳のまま、一言だけそう呟いた。 .