「あら涼、もう終わり?」 「ああ、Kouが思い浮かんだって弾いたフレーズが一発OKだったから、今日の撮りは終わり」 言いながら涼さんが近づいて来て、僕を見ずに屈んでテーブルのカードキーを取り上げた。 「じゃ行こうか」 その手の甲で僕の肩に触れる。 顔を上げた時にはもう金色の髪がドアから消えようとしていた。 「…あ、の……」 「行きなさい。 明日また連絡するわ」 遠山さんにも押し出されて、仕方なく後を追う。 心臓が激しく打ち続けている。 これまでにない、予感を秘めた鼓動だった。 .