初めてのレコーディングなのに、



機材に囲まれて


耳が痛くなるほどの静寂がたまに訪れる密封空間なのに、



ガラスの向こうには確かに涼さんの存在を感じた。



指示を出す声はディレクターさんだけのもの。




声が聴きたいとは何故か思わなかった。




不思議と



まるでテレパシーのように


涼さんはそれでいい、と言ってくれているような気がしていた。





僕は涼さんが、僕に求めているものをいつしか体現出来る程に繋がっている気がした。



態度や、言葉以外で、こんな風に分かり合えることを初めて知った。





緊張はしているのに



いつまでも
このレコーディングが
終わらなければいい、



そう思うくらいに。




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