1時間に及んだミーティングを終えると社長と幹部が帰り、代わりにレコード会社とスタジオのスタッフがやって来た。
かねてからのスケジュール通り、新生ONEの第一弾シングルがレコーディングまで無事漕ぎ着けたのは当たり前のようでラッキーだった。
初めてのレコーディングに緊張した顔でディレクターから説明を聞くミナトくんを、スタジオのマジックミラー越しにオレは眺めた。
周囲では慌しく機材のセッティングが進んでいる。
背後のソファでギシリと軋む音がした。
振り返るとKouがギター片手に座っていた。
そのままソロのフレーズを弾いては止め、またコードを確認するよう弦の上で指を移動させるが、心ここにあらず、というように目はガラスを見つめていた。
「――なぁ…有本のこと、どうするつもりなんだ?」
オレにしか聞こえないような声でKouは呟いた。
オレは黙ってKouの向かい側に座った。
「ヘタを打つとアイツはこのことをどっかにタレ込むかもしれない。穏便にというよりは…上手く処理するしかないな。
その辺は遠山に任せるさ。アイツはどうせ金にしか興味が無いヤローだしな」
ため息をついてKouはギターを横に置くと、頭をグシャグシャとかき乱した。
「なんか…あるんだろうとは思ってたけど。
――お前は知ってたんだろ?」
頷きかけた時、ディレクターがスタジオから戻った。
椅子に座りヘッドフォンをつけると、スタジオへの音声をONにする。
「じゃあ涼くん、準備OKです。
まずはどういうものか、試しに流させてみましょうか?」
その声にオレも移動してヘッドフォンを取った。
「よし、じゃあミナトくん、リラックスして一度最後まで流してみるからやってみよう」
スタジオではこちらが見えないミナトくんが、頷くのが見えた。


