距離的にはオレ達の方がスタジオに近いけれど、到着したのは最後だった。
応接室に椅子を持ち込み、社長、メンバー、遠山と一部の事務所幹部が来ている。
用意されていた中央の椅子にオレ達は座った。
部屋があまり広くないから空気が悪い。
まだ誰も沈黙を破らないせいもある。
この雰囲気でミナトくんに口火を切らせるのも忍びなく、オレは遠山に目配せした。
遠山はそれから社長を見て確認するように頷くと立ち上がった。
「おはようございます。レコーディングの前に時間を頂いてミーティングを行います。
まず、これから話すことは極秘事項なので、絶対に外に漏れることのないようにお願いします」
話しながら遠山はミナトくんの隣までゆっくり歩いて来る。
「このシングルでONEの新ヴォーカルとしてデビューする、この本城ミナトくんについてです。ここからは…ミナトくん?自分で話せるかしら?」
そしてミナトくんの肩に優しく手を置いた。
コクリと頷きミナトくんは立ち上がった。
オレは黙って見守ることしか出来ない。
隣に座ったこともあって、オレはミナトくんをというよりはこの話に対するメンバー達周囲の反応を見渡した。
「昨日は皆さんに、もの凄く迷惑をかけてしまって…本当にすみませんでした。
無責任でした…反省してます…」
ミナトくんの声は消え入りそうだった。
本人の恐れとは裏腹に、昨日あちこちを駆けずり回ったであろうメンバー達は一様にホッとした顔をしている。
「――僕は皆さんに、これまできちんんと説明してこなかった過去があって、昨日の取材で会ったライターの方にその事実を知っている…と言われて動揺してしまい、よく考えずに逃げ出してしまったんです」
遠山と、社長を除く全員が目を見張った。
大丈夫…
オレは別に祈りもしなかった。
誰も受け入れない奴は居ない。
ミナトくんの話に、ただ耳を傾けた。


