遠山さんを玄関まで見送った後、再び鍵をかける音がした。
戻って来る足音に、僕は慌ててソファーに座った。
明日…ここから一緒に行くって…
ここに泊まれってことかな?
このまま朝まで…?
真顔になって僕はその意味を考えてしまう。
涼さんはため息をつきながら元いた位置に座りなおした。
「――オレがみんなに説明すべきだって言ったのは、ミナトくんの過去についてだけであって、それは先々何かが起こった時のためだよ。
勿論これからは、遠山も事務所もそんなことが無いように努力はする。
…でも有本の件に関しては、今手を打って内々に処理した方がいいんだよ…」
ことさら不機嫌そうに長い髪をかき上げて、ついでのように僕を見た。
「オレはアイツが嫌いだし、君に危害があるなら尚更だ」
と付け加えた。
どうして?と問いたい気持ちを僕は抑えた。
反抗するつもりは無いけれど、それだと僕が今日迷惑をかけてまで逃げ出した理由は説明出来なくなってしまう。
けれど涼さんには僕が知りえない、あのライターを切りたい理由があるんだろう。
「隠し事を、今更増やす勇気が無いんです。
出来れば隠しておきたいことですけど、遠山さんの言うことを聞いていたら、僕は今までお世話になって来たみなさんにどんなに不誠実だったか痛感させられました」
「じゃあミナトくんは!……」
急に涼さんが語気を強めた。
その剣幕に、僕は肩を揺らした。
また何か地雷を踏んでしまったかもしれない…!
僕の考えは、きっと涼さんの思惑からことごとく外れているのかもしれなかった。


