涼さんはまるで何事も無かったように話を続けた。
「話はこれで終わりじゃない。問題はこっからだ…
今日の午前の取材、2件あったらしいけど最初の雑誌はどこだった?
ライターは誰だ?」
小刻みに肩を震わせていた遠山さんが顔を上げた。
「――なぜ?」
「あの…ッ」
僕はたまらず割り込んだ。
僕のことなのに、2人だけで話を進められているようでこれじゃあ蚊帳の外だ。
「その最初にお会いしたライターさんが、取材の後声をかけて来て…
僕の前の、その生活を知っていると言われたんです」
遠山さんの目が大きく見開かれた。
「有本さんが!?」
「有本なのか!?」
涼さんの驚きの声が続いた。
「『サウンド・ジャパン』よ。記事はヴォーカル発表直後の発売誌に載るわ…
でもどうして有本さんが…?
ねぇミナトくん、それってチェックの赤いシャツの人のことよね?」
僕は黙って頷いた。
「有本を切れ」
涼さんが冷酷に言った。
困り果てたように遠山さんは首を振るだけだった。
「そんなこと、ここで決められないわ。
社長も、メンバーも含めて話し合いましょう…」
「ダメだ。社長にだけお前が内密に話しをつけろ」
「無理よ!!」
今度は完全に泣き声になった遠山さんを見て、僕は立ち上がった。
「そうして下さい。僕が皆さんに話します…!
明日のレコーディングの前に時間を下さい」
それは遠山さんにというよりも、涼さんに決意を告げたつもりだった。
涼さんが、僕を庇おうとしてくれているのが
痛いほど分かったから…


