「……いつかバレるとか、バレないようにすればいいとか細かいことはどうでもいい。
そんなことどうにでもしてやれれる。
致命的だろうが何だろうが、一度は辞めようとしたオレ達が何を慎重になる必要がある?
オレはヴォーカルはミナトくんしか居ないと思ったし、ミナトくんはやるべきだった。
お前に話したって反対されるのは分かっていたから話さなかった」
遠山さんを見下ろしたまま涼さんはキッパリ言った。
その無表情の顔を長い爪の指がパンっと打った。
睨み合う2人を僕はただオロオロして見つめた。
会う度に何故か2人には喧嘩されてしまう。
顔を高潮させ涙目の遠山さんに、平手打ちをされても涼さんは身じろぎもしない。
ハッと僕は息を飲んだ。
こんな時に妙に勘だけが冴えている。
遠山さんは…
涼さんを…?
その瞬間に、確かに僕はズキンと胸が痛むのを感じた。


