コーヒーの香りで目が覚めた。



天井の模様の違いと周囲の音が遮断された広い空間が、一瞬にして記憶を呼び覚ます。


ここは…
涼さんのマンションだ。



昨夜遠山さんを見送ってから数時間しか過ぎていない。
だけどグッスリ眠っていたようで頭が冴えている。









あれから――


涼さんが電話をすると遠山さんは10分で現れた。
僕を発見したというメールですでにここ向かっていたらしかった。


こっぴどく怒られると思っていた僕は、部屋に入るなり飛びついて来た遠山さんを抱き止めて目を白黒させた。



「心配させないでよ!!バカばっかりなんだから!」

と紛れも無く怒ってはいるようだったけれど、心配という言葉に僕は嬉しくなった。


「ごめんなさい」

いつもより小さく感じる遠山さんがあんまり華奢なので、さっき抱きしめられた涼さんの体を思い出し1人で赤面した。



「遠山、大事な話があるから座って」


床から立ち上がりもせずに僕達を見ていた涼さんが言った。


その声の冷たさに
僕はまたスッと気持ちが落ちるのを感じた。



やっぱり…
すごく怒ってる――


どうして?
どうしてさっき僕に…


聞きたいのに
もう聞けない。