猛烈な怒りの矛先は
勿論まず
その社長だという男だ。
金で恩を売り、子供を欲望のはけ口にした男。
母と生活の為にそれを我慢した、幼いミナトくんを想像するだけでこの上なく痛ましい。
そして
そんなミナトくんが
同じ世界に身を堕とし
間違った道を行く少年を買った大人がいたということ――
何もかもが
腹立たしい。
ついでを言えば
これまで想像だにしなかった暗く悲しい人生に比べ
自分の脳天気で幸せな人生に、感謝のひとつもしたことがない
自分の甘さ加減にも腹が立つ。
何故
この素直で優しい子に
そんな不幸が身に起こった?
どうしてこの子は
そんな人生を送っていながらこんなに良い子なんだ?
オレが何か言葉を発するのを怖がるように、背を向け、また泣いているのか肩を震わせているミナトくん。
この小さな背中が背負っていた過去の重みは
もう脱いでもいいんだと
神様が言い
その為にオレの喉が潰れたのだとしたら
オレは歌えなくなったって本望だ。
もう充分に夢を見たのだから。
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