涼さんがコーヒーカップを両手に持ち、立ったまま僕を待っていた。




「どうかした?
大丈夫?
ごめんな、歌うのそんなにイヤだった?」



申し訳なさそうに形の整った眉を下げる。




「あっ、いえ!
や、恥ずかしかったですけど…
えっと…………」




そうじゃなくて………
あれは、
何?





思わず無言で涼さんをじっと見つめてしまう。




聞きたいけど―――
勝手に見ておいて、聞いていいものか……




すると何故か涼さんは急に慌てたように動き出し、カップをテーブルに置くとせかせかキッチンに戻った。




「ま、まぁ座りなよミナトくん!」



「?……はい……」



言われた通りさっきのソファーの位置へ僕は戻った。




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