――リアム! 
 彼を助けたいのに兵士が邪魔だった。炎をものともせずに近づいてくる。
 クレアは届かないとわかっていても、弟子に向かって右手を伸ばした。

 オリバーを止めなければ、フルラに住む人々も、リアムも兵士もみんな死んでしまう。クレアは、首から提げていた涙型の紅い魔鉱石を左手でぎゅっと握った。

『リアムを、放しなさい!』

 ありったけの魔力をこめると、今までにない威力で爆発が起きた。

 自分を中心に天にまで届きそうな赤い火柱が上がる。爆音とともに熱風と炎が大地を駆けていく。

 行く手を阻んでいたグレシャー兵を吹き飛ばしクレアは、炎の鳥をオリバーに向けて解き放った。

 ***


「殺されかけて、気を失っていた俺が次に目を覚ましたとき、周りは火の海だった。叔父の姿はなく、ぼろぼろに傷ついた師匠がいて、すぐに大きな炎の鳥に飲まれた」

 ミーシャは下を向いた。

「その光景を見た陛下は、力を暴走させた。炎を鎮めるために、一瞬でフルラ国全土を凍らせたと聞いています……」

「力を使いすぎた俺は再び倒れ、すぐに氷は溶けたらしいけどね。炎で焼け、水浸しになったフルラの大地にオリバーも、クレアの姿もなく、人々は勝手に魔女クレアだけを悪者にした。精鋭部隊だけでのフルラ国奇襲は、オリバーの独断だったのに」

 リアムは拳を作ると振りあげ、強く氷の表面を殴った。