リアムのエスコートで、豪華な椅子がある上座へと進む。

「みんなに紹介する。彼女が我が妻となる、ミーシャ・ガーネットだ」
「みなさま、お初にお目にかかります。フルラ国から参りました。ガーネット女公爵の娘、ミーシャ・ガーネットです。よろしくお願いします」

 誰よりも早く、ジーンが大きく手を叩いた。すると列席した人からも拍手が起こる。

「雪降る中、我々のために集まってくれたことに感謝する。今日は心ゆくまで楽しんでいって欲しい」

 あいさつをすませるとリアムは「座って」とミーシャに声をかけた。

 椅子は一人掛けではなく、長椅子だった。腰かけると、ライリーとユナがドレスの袖を直していく。

「少し、あいさつをしてくる。きみはゆっくりしていて」

 返事をする前にリアムは、自分から人の輪に入っていった。
 立つタイミングを逃してしまい、しかたなく座ったまま彼を遠くから見守る。

 リアムは皇帝陛下だからとふんぞり返り、偉ぶるタイプではないようだ。
 次々と、自ら臣下に話しかけていく。あいさつしようとする人が彼のもとへと詰めかけるが、それをジーンが捌いているようだった。

 決して笑顔を振りまくわけではないが、ちゃんと一人ずつと言葉を交わしている。

 ――人見知りしていたあの子が、すっかり大人になってる。

 嬉しくて誇らしいような、少し寂しいような気持ちで胸がいっぱいになった。

「氷の皇帝は、みんなに慕われているのね」
「魔女クレアのためです。無理をなされているようですよ」

 誰も魔女には近づかないだろうと油断していた。声をかけられ、ミーシャの肩は跳ねあがった。

 振り向くと、そこにはすらりとした女の人が立っていた。
 目は大きく、少し釣り目。どこかで見たことがある気がした。

 彼女はミーシャに向かってにっこりとほほえむと、きれいなカーテシーであいさつをした。

「初めまして。わたくし、ジーン・アルベルト侯爵の妹、ナタリー・アルベルトと申します。突然話しかけた無礼をお許しください」

 彼女の美しい栗色の長い髪が、ふわりと揺れた。