驚いて今度はミーシャが目を見開いた。手を取られ、指先に彼の唇が触れる。

「……リアム?」

 しばらくそのままの姿勢で動かない。どうしたらいいのかわからなかった。名前を呼んでも顔をあげてくれない。伏せられた銀色のまつ毛を見つめる。

「麗しき我が夜明けの女神。俺も、発言の許可をいただいてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです」

 リアムはゆっくりと顔をあげた。銀色の髪がさらりと揺れる。前髪から覗く、ミーシャを見つめる碧い瞳は切実で、燃えるような恋慕の情が見て取れた。

「ミーシャは、俺との子どもを、本心から望んでくれる?」

 甘くしびれるような声に胸がとくんと跳ねた。

「……はい」

 こくりと頷くと、彼はやさしく目を細めた。

「本心なら、……俺にお願いをしながら、キスをして」

 とくとくと胸が早鐘を鳴らす。
 自分を見あげるリアムの片方の肩に、そっと手を置く。顔を近づけると、朱鷺色の髪が彼の身体に垂れて触れる。

 きれいなリアムの唇に自分の唇を重ねた。離れるときに「お願い」と伝えると、手をぎゅっと握られた。

「俺は、きみに弱い。ミーシャに惚れている。きみの願いはなんでも叶えてあげたい」

「リアムの気持ちは嬉しいです。だけど、あなたの気持ちが伴わないのはいやです」

「俺の気持ちは、きみを失いたくない。ただそれだけだ。三度目は、耐えられない」

 リアムは、空いているもう片方の手でミーシャの髪を掬うように触れると、愛しそうにキスをした。
 髪先だというのに、それだけで身体の芯に熱が灯る。彼の何気ない仕草一つ一つに魅了され、心が奪われる。

「子どもを産むのは命がけだ。女性の身体にだけ大きな負担をかける。……ミーシャに万が一のことがあったらと考えると、怖くてしかたがない。子どもなど望めない」

 リアムの声と、表情は切羽詰まったものだった。